akiraの個人ブログ

akiの個人ブログです。読んだ本の感想、めんたねでやってる心理学、カウンセリング、催眠の事とか、他にも旅行、外食、買ってよかったもの、ラノベ、アニメなど興味のあるものを書き連ねていきます。

映画「ザカリーに捧ぐ」を見て

随分前だがある日テレビをつけると『松嶋×町山 未公開映画を観るTV』という番組が偶然東京MXで流れていて、この映画を紹介していた。町山氏の説明からすさまじい映画だと思って、最後まで見てしまった。

Youtubeに動画が上がっていたから貼っておく

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この映画は実話を記録したドキュメンタリー映画だ。アンドリューという一人息子を殺された両親と、アンドリューを殺した元恋人のシャーリー、そしてシャーリーとアンドリューの間にできた子供のザカリーをめぐる話だ。アンドリューという若い医学生がシャーリーという恋人に殺されたことから始まる。シャーリーは当然逮捕されるのだが、アンドリューとの子供を妊娠していた。この映画の舞台はカナダなのだが、カナダの法律の関係で殺人犯であるはずのシャーリーは子供がいることを理由だったかなんと釈放されてしまう。釈放後子供を出産する。子供の名前はザカリー。

映画のタイトルにあるように、もともとはザカリーのために父親のアンドリューの友人が父親についての記録を映像に残すために撮影が始まった。しかし、撮影をしていくうちに、シャーリーとアンドリューの両親のザカリーを巡っての対立が深刻になってしまい、結果としてカナダの法律の問題について問うドキュメンタリー映画になってしまった。

まず衝撃なのは、殺人犯が平気で釈放されてしまうところだ。司法の判断では殺意のある人間はすでに殺害したから問題がないという。背景には異様な権利保護の思想があるのか、カナダの法律に詳しくないのでわからないが、恐ろしさを感じる。

見ていて胸が痛むのは、アンドリューの両親である。彼らからすれば愛する一人息子を殺されてそれだけでもつらい。しかし息子を殺した女は孫を妊娠していたことが判明し、出産してしまったので、孫を放り出すわけにもいかない。だから、孫のために定期的にシャーリーに面会をすることになってしまう。これもカナダの法律の関係でシャーリーから孫のザカリーを取り上げることはできない。その上ザカリーとの面会もシャーリーの許可が必要になる。

息子を殺した憎い相手に対して、孫のためにへりくだって気を使って何とか援助を試みようとする両親が本当にいたたまれなかった。シャーリーは出産後、というかもともと精神的に不安定なので、例えば両親と約束をしても面会をすっぽかしたり、突然日程を変えたりゆさぶりをかけてくる。さらに偉そうに両親に対して援助させてあげるという対応ぶりで、見ているだけでもはらわたが煮えくり返る思いだった。

一応僕はカウンセリング業界に足突っ込んでる人間だから、シャーリーみたいな人たちの振る舞いというのは理解はできるし、この手の人の取りうる行動パターンだというのは分かっているが、それはそれとして感情の収まりがつかない話だなと思う。ラストは本当に救いがなくてシャーリーがザカリーと一緒に無理心中して親子ともども死んでしまうのだ。

無理心中の直前のシャーリーはさらに不安定になって、バーで出会った男にストーキングまがいの留守電を何十件残してたとかで、ありそうな話だが実にやるせない。

無理心中の後のアンドリューの両親の話がきつい。シャーリーへの罵倒を交えながら、どうやって孫のザカリーを救おうかひたすらに考えていたことを話す。
アンドリューの父親が「妻を睡眠薬で眠らせて、自分がザカリーを誘拐してアメリカに連れて行く。自分は逮捕されるが妻は睡眠薬で眠らされていたので罪に問われず、アメリカでザカリーを妻が育てる」たしかそんな話をしていた。結局実行はされなかったがどんなことをしてでも救い出したい、しかし叶わなかった無念さがとてもやるせない。

あまりに胸糞が悪いのだが、実に見ごたえのある映画である。

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