ポール・トーマス・アンダーソン監督の3作目の作品。僕の友人がこの監督のファンで友人からDVDを借りてみた。
その友人と一緒にブギーナイツを途中まで見ていたことがあって、この監督の作品はうまく言えないのだが人間を描かせたら素晴らしいなと思っていた。
さて、この作品3時間の長さで最後まで見て、どうにも言葉にならなかった。
登場人物が多いからキャラクターの関係性を理解するのにちょっと難儀したし、冒頭と終わりの死刑囚や自殺しようとしてビルから飛び降りた息子を偶然ショットガンで撃ち殺した親の話とかわけのわからない、しかしおそらくは意味がある話が、作品の中でどういったニュアンスで、意味合いで語られるのかわからなかった。
まったくわからないというわけではない、偶然性、何かが何かと何かでつながっているみたいな。不条理で、意味があるようでないような。
何とも言い難い無常観を感じたりはする。それも錯覚かもしれないが。
この作品はロサンゼルスを舞台にした9人の男女の24時間を描く群像劇である。
男性向けの自己啓発セミナーの講師
人気クイズ番組の司会者
薬物やってる司会者の娘
クイズ番組の初代王者だけど現在は職場を首になりそうな男
末期がんに侵されているクイズ番組の元プロデューサー
元プロデューサーの後妻
元プロデューサーの介護士
クイズ番組に出演するクイズ少年
敬虔な信仰を持つ警察官
記憶を頼りにざっくり書いたがこの9人の24時間が断片的に語られる。
最初のうちはまるで登場人物につながりがないので把握するのが大変だった。
見ていてわかるのはどの人物も人生うまくいってなさそうな感じである。
セミナー講師はセミナーの内容が記号的なほどに女性蔑視でマッチョイズム的な内容だ。
トムクルーズが演じているのだがセミナーのシーンは必見だと思う。ある意味見せ場かもしれない。
高らかにこういうのだ。
「イチモツを敬え」「オマンをてなづけろ」”Respect the cock, tame the cunt!”
これでもかと醸し出される男性性の強調は背景に何があったのだろうかと想像させるくらい露骨だ。史上最低の作戦の時のハゲプロデューサー役でも思ったのだが露悪的なキャラを演じさせるとトムクルーズノリノリじゃないか?で、セミナーが終わった後にインタビューを受けることになるのだが、そのインタビューで講師の過去がだんだんと明らかになっていく。
クイズ番組の司会者は娘がいるのだが、娘とうまくいっていない。
娘は家に男を連れ込み、薬物をやり、すさんだ生活をしている。物語の後半で明らかになるが娘への性的虐待を思わせる語りがされる。
娘は娘で言動からしてすごいメンヘラだなと思った。警察官が家にやってきていろいろあっていい感じになるのだけど
「すべてを話してほしいとか」「隠し事はなしにしてほしい」とか他者への関係性の持ち方が0か100かという感じ。盛り上がってキスをするがその後に警察官を拒絶する。
クイズ番組の初代王者は子供のころはすごかったが大人になってうだつが上がらない。仕事ができないのでクビになってしまうし、たぶんバーテンダーに相手に気に入られようとして歯の矯正を
始めてるのだけど、金がないのにそのあたりに金を突っ込むところとか、たぶん重要なのは歯の並びではないのにそのあたりにリソースをかける感じにダメっぷりがにじみ出ている。
末期がんの元プロデューサーはひたすら過去への後悔を語る。最初は何言ってるかよくわからないのだが後半になるとだんだん作品のつながりがわかってくる。
元プロデューサーの後妻はなかなか大変な人で金目当てで結婚したし、結婚した後も不倫しまくったがそのことをすっごく後悔していて、自分の罪を告白してだんだんといかれていく。ヒステリーや金切り声が印象的。
介護士が唯一この作品ではまともといえる存在。
クイズ少年は親父が息子を金儲けに使っていて親子関係はうまくいってない感じ。
とみていると何となく話のつながりや登場人物のキャラクターがわかってくる。話をつなぐものとしてクイズ番組があることはわかる。
その間にも警察官の前に出てきてよくわからないラップを言い出す黒人のラップ少年とか、ひたすら暗喩的、説明がそんなになされない場面展開がなされていく。
普通なら眠くなってしまいそうになるのだが、キャラクターがどうも強烈で謎だしとにかく気になって最後まで見てしまう。
物語の最後になると末期がんに侵されている元プロデューサーとセミナー講師が実は親子だったということが判明し、今わの際に会うことになる。
自分を捨てた父親と会うセミナー講師。愛憎入り混じる場面でそこが映画の見せ場かと思えば、場面が切り替わりしばらくして空からカエルが降ってくる。
警察官の場面になって車を走らせていると空からカエルが降ってくるのだ。
そしてこの作品は同じ日の24時間を9人の登場人物の視点で描いているから、9人それぞれの視点からカエルが降ってくる描写が現れる。
物語の終わりにかけてそれぞれの課題だったり見せ場だったりがあるわけだけどカエルが降ってきて全部崩れてしまうのだ。
キャラクター同士のやり取りはさておいて皆がカエルに視点が集まったり、それまでやろうとしていたことが崩れてしまう。
いったいこれはどういう意味なのか。どういう意図で作品に入れたのか。それが気になってしまう。カエルだし。
またカエルが降ってくる映像が気持ち悪いしグロい。ウシガエルみたいな大きいカエルが降ってきて、しかもものすごい量が断続的に降る。大きな肉の塊が落ちてつぶれてべちゃっという音がまた気持ち悪い。
ひとしきり登場人物を一周したら翌朝になっていて、日常に戻っていくという感じ。そして冒頭に出たよくわからない死刑囚の話とかがでて映画が終わる。
え?これで終わり?みたいな。
後で知ったがカエルが降ってくるのは実際にそういう事件があったらしくて、それを題材にしたのか。
また登場人物たちが歌を歌うのだけど、監督としてはその歌からインスピレーションが浮かんで映画を作ったとか。
いかようにでも解釈ができるかもしれないし、どうも奥深さを感じてしまう映画だ。いろいろと映画を題材に語ることもできるかも。とりあえず町山智弘の解説がほしいなと思ってしまいました。
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