荻生徂徠の『政談』は読もう読もうと思って、結局積ん読になっている本だ。
ある日偶然友人から面白いよとこの本を貸して貰って読んでみたら確かに面白かった。
最近はやりの漫画で解る系の本だから、ぶっちゃけ絵解きになってるんだろうと、あまり期待していなかっただけに良い意味で裏切られた。
荻生徂徠の『政談』を原作に近未来のディストピアSF漫画になっていた。
話はざっとこんな感じ。近未来の日本が舞台で人工知能「SORAI」に政治の全てをゆだねることになった。「SORAI」の打ち出す様々な政策に、バンドをやっているフリーターの主人公が翻弄されていく。
正社員の彼女とは上手くいかなくなり、バンド仲間も「SORAI」の制作の影響でバンドを辞めていく、そして自分自身も生活の変化を余儀なくされる次第に「SORAI」に対する不満から「SORAI」の正体を探ることになり・・・
という感じでなかなか読ませる。
『政談』は荻生徂徠が将軍への政策提言の書として書いた本だが、内容を今回初めて知った。
漫画の中での「SORAI」の政策提言をざっくりまとめると、政治家の世襲禁止。無職禁止なので強制的に何かしらの職に就かされる。居住は国が指定する。居住区も職業に分けられる。フリーターはフリーターで集まって住む。借金禁止。1次産業2次産業の優遇。管理者と工場労働者は同じ場所に住め。と強制力が強く現代社会でこの提言が実施されていく様はディストピアの様相だ。
ただ、一概に悪いとは言いがたく、国家が強制的に職に就かせて働く中で登場人物が
「定額で給料貰って、ほどほどに働いて俺幸せかも」
と言ったり、居住区の指定も合理的と言えば合理的ではあるのだ。
強制の良い面もあったりするので単なるディストピアという風に作中では表現されていない。
もう現代ではこんな政策難しいだろと思うのだけど、描き方が上手いのか現実味のある描き方になっていて大変面白かった。漫画で解るシリーズもバカに出来ないなと思った作品だった。
積ん読になってるこっちも読むかなぁ