akiraの個人ブログ

akiの個人ブログです。読んだ本の感想、めんたねでやってる心理学、カウンセリング、催眠の事とか、他にも旅行、外食、買ってよかったもの、ラノベ、アニメなど興味のあるものを書き連ねていきます。

【書評・感想】プレーンソング 保坂和志著

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大学のゼミの先輩だった川島さんから7日間ブックチャレンジのバトンをもらったので、勢いで初めてみる。7日間持つのかわからないけどまあ良いだろう。

1日目は保坂和志の『プレーンゾング』を紹介する。
女の子と住むために2LDKの部屋を借りたのだがその前に振られてしまって一人でその部屋に暮らす主人公のところに、ぞろぞろと人がやってきて住みついてしまう。住みついた人間が女の子を呼んだり、みんなで海に行ったり、ひたすらあーでもないこーでもないとおしゃべりをしたり。そして生活の中には猫がいて・・・

という感じの小説であらすじで小説の魅力を説明するのがとても難しい小説だ。なにせこの小説は山もなければオチもない。起承転結が見事にないのだ。冒頭からして主人公が部屋に住み着く説明もそこそこに日常が流れていく。

わかりやすい事件もないし、謎もないし、終わり方もえ?これで終わり?みたいな小説らしからぬちょんぎれた感じで終わる。しかし最後まで読み通してしまう。

この小説を紹介してくれた友人がこの小説をして「これは究極のキャラクター小説だね」といったのが実に印象的だった。出てくる登場人物のやりとりだけでとにかく読めてしまうのだ。それがとても面白い。どう面白いのかというと、説明が難しいのだが、ああ、こういう奴いるよなぁ〜!って感じで人物の描写とか、やりとりとか、おしゃべりの中身がとにかくリアルで、おしゃべりの内容だって特に特別なことはないのだけど、前に来た女の子がどうだとか、共通に知人に対してあーでもないこーでもないとか、そういうありふれているし、ものすごく平凡で日常的なやりとりなのだ。

保坂和志の小説はだいたいこんな感じで、どの作品もヤマもオチもない、登場人物たちのやりとりで話が進んで終わる。芥川賞をとった『この人の閾』だって、主人公が出張のついでで時間ができたから小田原に住んでいる人妻の友人に会いに行っておしゃべりして帰っていく、それだけなのだ。

だが、それだけなのに、とても魅力的で読ませてしまう作品になる。それが保坂作品の凄みだ。人間への描写が実に深く、リアルを感じさせる。

もう一つおもったのは、この作品はこれまでの人生経験というか、どれだけ人と関わって話してきたか?というのが問われる作品なのだと思う。僕がこの作品を呼んだのは22か23の時だったと思う。初めて読んでみて思ったのは「この作品10代の頃だったら面白さがわからなくて読んでなかったなぁ」ということだ。他人と話すこと、関わることということは大学に入って以来急激に増えたし濃密になった。その経験がこの作品を読めるようにしてくれた、そんなふうに思ったのである。

紹介が難しいがとにかく読んでみることをお勧めしたい。

さて、バトンを渡すのがブックカバーチャレンジらしいから、バトンを友人のHくんに渡したい。よろしく。